先日、あるセミナーで講演をさせていただきました。
46歳にしてクレコスという化粧品を作り、会社を立ち上げた体験談ですが、過去の
話はそこそこに、これからの会社の方向性に重点をおいてお話をいたしました。
クレコスは創業以来、日本に根差した化粧品会社であり続けたいと考えてまいりました。
商品コンセプトも出来るだけ国産で生産者さんの顔が見える原料を使いたい。
『母から娘へ』という理念の元、化粧品を通して日本の文化伝統自然を次世代へ伝え
ていきたいと考えてまいりましたが、それらのことを集約し今まで行ってきた活動を
まとめ上げたのが『大地母』という新しい企業理念です。大地に根ざした母の心で、
商品づくりをするということです。
講演が終わった後、「クレコスの考え方が色々とわかってよかったよ」という感想を
いただき、小さな会社なりにささやかな活動でも出来ることをコツコツとやってきた
だけですのに、真面目にやっていれば人様の心に届くのだなぁとこちらが感激いたし
ました。
さて、同じセミナーに今回は私が楽しみにしていた、すてきな方が講師としていらっ
しゃいました。
島根県の石見銀山で【群言堂】という国産の生活着や雑貨などの会社をなさっている
松葉登美さんです。
人口400人あまりの町、石見銀山を根っこに「ものづくり」をしたいと、18年と
いう長い年月をかけて醸成してこられたブランドの方向性など、いろいろ共感すると
ころが多くぜひお尋ねしたいと思っていました。
クレコスも会社を通して今まで様々な活動をしてまいりました。
オーガニックコスメというジャンルにいるからこそ、自然を大切にする活動をした
い、と考え、実は10年程前には山間部に家を探しにいったこともあります。
移住をする覚悟でないとダメなことがわかり、今の会社の経営とは一緒に出来ないと
いうことで山間部にクレコスの家を持つことはあきらめました。
その代わりに『クレコスいのちの森倶楽部』という組織を作り、有志が集まって里山
で電気を使わない生活を体験したり、農薬を使わず、野菜やバラ作りに挑戦してみた
りと活動してきました。
主にやったことは、日本の森林の現状を学ぶことです。
京都にある手つかずのブナの原生林<芦生の森>に何度も足を運んだり、また、荒れ
ている植林地の現状を学び、その現状を一人でも多くの人たちにお伝えしたくて植林
や間伐のボランティア体験にも参加し、「森倶楽部だより」を通して発信してきまし
た。
このように何とか日本の良さを次の世代に伝えたいという基本的な思いが、松葉登美
さんが目指される方向性と合致しているのです。
登美さんのお話を何度も頷きながらお聞きし、その素晴らしい発想と行動力に深く深
く感銘を受け、私の話などまるで幼稚園...とちょっぴり落ち込みましたが、でもクレ
コスの目指すところもこれからの日本にとって正しい方向を向いているのだと確信い
たしました。
そのほかに地方のスーパーを経営なさっている西山進さんの講演も、やはり地産地
消。契約農家で無農薬、自然栽培で作られた野菜を売り、お惣菜売り場で調理の折に
出る野菜くずなどを肥料として再生し使うという循環サイクルを実施なさっていると
いう素晴らしいものでした。
クレコスでは植物の力をいただく商品づくりは自然農と深く関わってくるものだと認
識しています。今後、自然農のお茶の成分を自社で作り上げていくことにも繋がって
くるお話です。
今回不思議なことに、ご講演をされた方が一様におっしゃったのは
「日本人は農耕民族で、お米を食べて日本文化を作り上げてきた。
その心を次世代へ伝えていかなければ」ということでした。
その言葉に、クレコスが創業以来、みなさまにお伝えしてきた「お米を食べる農耕民
族のDNAに合った化粧品」というメッセージを重ね合わせ、意を強くしました。
3月11日以降、大きく日本が変わろうとしています。
それはきっと日本人の心を私達が取り戻し、日本の自然の流れを大切にし、もっとも
っとではなく、ゆっくりと落ち着いたものづくりがなされ、植物も動物も物も事も調
和の取れた世の中になっていくことだと信じて、クレコスも商品づくりに、仲間づく
りに励んでいきたいと思います。
■郡言堂
■スーパーマーケットNISHIYAMA